上海万博を迎えた2010年の4月、上海にとびきり贅沢な景色と居心地を持つホテルがオープンした。
その名も「レ スイート オリエント外灘上海」
住所は金陵東路1号。上海在住の方なら、この住所を見てこのホテルがどこに位置し、どれだけ贅沢なロケーションに建っているか想像できるかもしれない。
そう、このホテルは黄浦江のほとりの外灘の南端に位置するホテルなのである。
上海在住の方以外のために、このホテルの位置がどれだけ贅沢かということを説明すると、このホテルの客室から上海の夜景スポット№1と№2を競う外灘とその対岸の陸家嘴の夜景を同時に眺めることが出来る場所に建っているのだといえばその贅沢さがお分かりになるだろうか?
その両方を独り占めできるロケーションにあるのがこのホテルだ。
しかし、このホテルの贅沢さは決してそのロケーションにだけあるのではない。そのことはホテルに入るとすぐ分かる 。
実はホテルのフロントは1階ではなく3階にあるのだが、昔ながらの外灘の風景を壊さないよう気を使ったという、ちょっと地味目とも言える外観の1階入り口から入ると、きちんとドアマンが迎えてくれた。
そしてエレベータにたどり着くまでの少し長めの廊下を歩く時点から、このホテルの上質さが既に伝わりはじめる。
この空間に入ってきた宿泊客はホテルにたどり着いたというよりまるでヨーロッパの上質なモダンアート美術館にでも入り込んだかのような錯覚を受けるだろう。
きわめて静寂で、決してきらびやかではない装飾が、シンプルな美しさを表現している。
そして、エレベータに乗る。
このエレベーターでさえも、決して自己主張することなくしっかりとした重厚さを持ち、外灘の歴史を意識した装飾で、そこには最新のオフィスビルのエレベーターにあるような新しさの押し付けは全くない。控えめでありながらはっきりとした存在感で、そこがまたこのホテルの上質さを支えている。
エレベータを降りた3階のロビーもまた美術館そのもの。黄浦江を意識したという「河」がテーマの美術品があちらこちらに置かれ、この雰囲気を醸成している。
大きな音を立てるのが躊躇われるほど静寂な空間はやはりシンプルな贅沢というべきもので、煌びやかな豪華さとは対極にあるような価値である。
今回は日本人担当の中庭氏に、ホテルの中を案内いただいた。
まずは朝食ビュッフェの提供される食堂に案内された。
これがホテルの食堂かと思えるほど、非常にアットホームでリラックスした空間である。 アメリカの大きな家の家庭に招かれているような感覚に陥るくらい広々としている。 窓からは黄浦江を行き交う船が見え、さらにその向こうには東方明珠塔の陸家嘴の高層ビル群が見える。
朝食のための食堂スペースというにはなんとも贅沢すぎる眺めだ。
ここで提供される朝食はスペインから招かれたシェフが腕を振るう。ちょっとだけ料理を試食させてもらったが洗練された腕前の持ち主と見えて、絶妙な塩加減など家庭的な暖かい心遣いを感じさせる、そんな料理であった。
この空間は、朝食時以外はラウンジとしてコーヒー、紅茶、手作りクッキーが終日無料で提供されるとのことで、リラックススペースとして非常に贅沢な時間が提供される。
ブックシェルフも本物でありながらこの空間の演出に一役買っている装飾のように見える。
かつて金ピカ好きだった中国にも、いよいよこのシンプルな上質さを理解できる時期がやってきたのだと思うと、さすが万博を開催する国際都市になったものだと上海の都市としての成熟さえここに感じとることができる。
続いて前述の中庭氏から、今度は客室を見学させていただくことにした。
このホテルの部屋タイプは主に3タイプでどのフロアによってそれぞれ構成が異なる造りとのことで、今回は18階・19階の部屋を見学させていただくことにした。
まずはスタンダードタイプのお部屋、比較的暗めの廊下を進み、部屋の扉を開いた。
途端に、窓の外の光が目に飛び込み思わず感嘆の声を上げた。
「うわーー」
外灘の風景が大きな窓の向こうから飛び込んできた。その圧倒的な絶景に思わず鳥肌が立ち、感動の身震いが起きた。そのくらい圧倒的な光景だった。なんという眺めであろうか。上海に何年も住みながら私はかつてこのような贅沢な眺めに出会ったことがなかった。それほど衝撃的な感動を覚えた。この部屋にたどり着くまでにみた装飾の贅沢ささえ吹き飛んでしまうような衝撃である。
上海のホテルとして、これ以上に贅沢な眺めはない。そう感じさせてくれるのに十分な眺めだ。
部屋の内装もアールデコ調と東洋の魅力が融合したようなシンプルでありながら上質な内装で、この部屋の居心地の良さをさらにサポートしてくれる。取材の立場を忘れていっぺんでこの部屋を気に入ってしまった。
さて次にもう一つ別のタイプの部屋をご案内いただいた。
この部屋には一つ目の部屋とはまた違った別の贅沢な仕掛けがあった。
なんと、浴槽が黄浦江に面した窓際にあるのである。つまり外灘や陸家嘴の夜景を眺めながら入浴ができるのである。
こんなこと地元の上海人でさえもまずできない贅沢な時間の過ごし方である。それがこの部屋では可能なのである。全く持ってなんとも心憎い演出の部屋である。 一つ目の部屋といい、この部屋といい立地という条件だけでこれだけ素晴らしい贅沢が演出できるのだろうか、それを実感できるようなこれらの部屋である。
そしてもう1タイプ、スイートタイプの部屋も案内していただいた。 この部屋は建物の南東側に位置するためさすがに外灘の夜景を眺められる位置にはないのだが、正面に位置する東方明珠塔をはじめとする浦東陸家嘴の高層ビル群の眺めはさすがである。さらに南側の窓からは外灘南側の埠頭や豫園の風景を臨むことができる。
そしてスイートとして、ベッドルームと応接スペースがそれぞれ独立していて、南側に位置するベッドルームは太陽の光が明るく注ぎ込む部屋となっており居心地の良さをここでも演出してくれている。
外灘側の部屋が旅行者向けの演出空間であるならば、こちらは長期滞在の居心地感を優先したスペースということになるであろうか。それ程この部屋はリラックスを与えてくれる
ところで、このホテルは風景の素晴らしさにばかり目が行きがちだが、機能性の面でも新規開業らしく、そんじょそこらのホテルにはない抜きん出てた機能を持っている。 例えば、このホテルのルームキーカードはなんと上海市内の公共交通カード(上海のタクシー・バス・地下鉄・フェリーに使える電子プリペイドカード)としても利用できる仕組みになっている。もちろんホテル内での追加チャージも可能だとのこと。市内を出歩くのに交通カードとルームキーを別々に持ち歩かなくていいとは、アットホームを演出するホテルならではの優しい心遣いである。
また客室電話をモバイル化した「レ・モバイル」サービスや、24時間多言語のコンシェルジュサービスも外国から訪れた宿泊客にとってはありがたい。 そのほかにもビジネスセンターなどのパブリックスペースで、無料のインターネットサービスが提供され、エグゼクティブビジネスマンにとっても満足できる機能性を備えている。 今年開催される万博の会場までは車で20分ほどというロケーションの良さも上海万博観光の拠点としても見落とせないポイントである。
このホテルに70%の出資をしている台湾のオーナー会社はやはり台湾にあるホテルを運営していて、この上海のホテル同様にシンプルで落ち着いた雰囲気で非常に人気なのだそうだ。
上海には既に名だたる世界のホテルチェーンのホテルが軒を連ねているが、それにまったくひけを取らない贅沢なホテルがここに誕生したといってよいであろう。
上海を満喫したいと思ったら、ぜひこのホテルにお泊り頂いて思い出を持って帰っていただきたい。
(2010年5月記)
上海の観光地「外灘・バンド」の観光案内はこちら
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