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上海のオールドホテルを巡る その3
 
 

  衡山馬勒別墅飯店

Heng Shan Moller Villa



 

 延安高架道路を虹橋空港から一路東へ、静安寺エリアの近代的なホテル街が見えてくる。そしてふと右手を見れば、まるでおとぎの世界に出てくるようなヨーロッパ調の美しいレンガ建ての三角屋根が眼に入る。これが、昨今日本人観光客の間でも人気があるオールドホテル、衡山馬勒別墅飯店だ。しかし、この建物には当時「魔都」といわれた上海で活躍した人のさまざまな逸話が残されていることはあまり知られていない。

       

   

 この時代、上海には馬好きの西洋人が多くやってきた。当時上海は「カバン一つでやってきた冒険家たちの楽園」とも言われた。

 1919年、英国籍ユダヤ人のエリック・マーラーがそんな上海に上陸する。マーラーはその当時まだ定職も無く、「ごろつき」といわれても仕方が無い生活で、馬や博打に明け暮れる日々だった。とにかく馬が大好きだったマーラーは、日々競馬で稼いだ金で生活を営んでいたといわれている。

ある日、マーラーはアラビア馬を購入する。運が彼に味方したのかこの馬は連勝を続ける。ついに上海の競馬史に記録が残る最多連勝記録をマークし、マーラーの賞金は見る見る増えていく。数年の間で上海跑馬総会の会員になり、さらには総会の董事の役職にまで就くようになる。 

 

今も庭にたたずむ馬の銅像

愛馬とともに凱旋するマーラー

マーラーに幸運をもたらしたアラビア馬は、現役を退いたのちマーラーのもとで余生を送る。そして数年後、この馬の死を悲しんだマーラーは自宅の一角に自分の財を築く基礎を作り上げたこの馬のために、実物大の銅像を建てた。この馬は、「文化大革命」のころ一時草むらの中に捨てられていたが、その後再びもとの位置に戻され、現在に至っている。ただ、その当時の鞍は紛失してしまった。

 マーラーはその後、上海に馬勒機器造船有限公司と中国馬勒有限公司を設立する。船が大好きだったマーラーは、船に関係ある事業で財を蓄えていく。これらの会社では、造船のほかにも船の修理、貿易や海運なども手がけていた。最盛期には17籍の船を擁し、上海で最も大きな私企業の一つだった。この会社は、今でも滬東造船廠として息づいている。

 

馬勒別墅は北欧の建築様式で、凹凸の変化にとんだ豊かな表情をもっている。海運を営んでいたマーラーだけあって、建物全体は彼の大好きだった船をイメージして作られている。内装にも船をモチーフにしたデザインが取り入れられている。

1926年にこの建物の構想が練られている。一説によると、マーラーの娘が夜中に夢の中で 、父が娘にいつも語り聞かせたイングランドの故郷のような、いや北欧の山地のような、いやアンデルセンの童話のような不思議な風景を見たという。その話を娘から聞いたマーラーは、娘に絵を描かせて、建物のモデルができていった。設計に3年、建築に7年を費やして おとぎばなしの家は建てられていく。10年の歳月を経て1936年に完成する。延床面積は2411平方メートル、豪邸の前には広さ2000平方メートルの芝生敷きの庭が広がる。

この童話の世界に入り込んだような建物は、6つの建物が集まったような形になっていて、非常に複雑だ。まるで迷路のように入り組んだ廊下には、大小あわせて106の部屋があり、複雑な階段の構造は、いったい自分が今何階にいるのかわからなくなるような錯覚に陥る。もっとも今でも部屋として使われているのは主に16の部屋だ。特に2階にあるイギリス式の4部屋は、その細かい彫刻といい色彩感覚といい、モザイクスタイルの床といい、必見だ。

 

 この建物は一般の上海人にとってはずっと神秘的で秘密のベールに包まれていた。マーラー一家がこの中で贅沢な暮らしをしていたなど知る由もない。しかしここにも戦争の影が忍び寄ってくる。マーラーはユダヤ人で、その ため間もなくこの建物を後にする。1941年太平洋戦争が勃発し、旧日本軍が上海にやってきて、旧日本軍人のクラブとなる。その後は国民党の特務機関駐屯地となり、中華人民共和国が成立後は、市政府系の機関が入るなど転々としていった。

 

 老朽化が著しい馬勒別墅は、20011月にマーラー時代の当時の面影を忠実に再現して1年余りの時間をかけて徹底的な復元作業が行われ、現在はホテルとして使われている。それが現在の衡山馬勒別墅飯店というわけだ。

 建築の専門家から言わせると、必ずしもこの建物は学術的価値が高い建物ではないという。しかし、その背景にある多くのドラマが、人々を浪漫の世界へ誘う。

 このように、上海市内各地にユダヤ人の富豪たちが立てた邸宅が、いまだに当時の姿のまま残っている。     



(文・写真 山之内 淳中医ドットコム

■衡山馬勒別墅飯店■

陝西南路30号地図
TEL:(021)62478881
FAX:(021)62891020
日本語:月・火・水・木・土の8:00から18:00まで日本語OK

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